同志社女子大学英語英文学会会員の皆様 

 

 

   今日の新聞は、テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンを棄権したと報じていました。テニスファンとしては残念ですが、病気ということで仕方がありません。

 彼女で思い出すのは、BLM運動を支援していたことです。1968年のメキシコオリンピック男子200メートル競争では、優勝したトミー・スミスと3位のジョン・カーロス(ともにアフリカ系アメリカ人)が、表彰台で頭をたれ下げ黒い手袋をはめた手を突き上げ、アメリカでの人種差別に抗議しました。二人はスポーツに政治をもちこんだと非難され、アメリカの陸上界から追放となり、アスリートとしての人生を全うすることができませんでした。純粋なアマチュア選手で行われていた当時のオリンピックと現代のプロスポーツを単純に比べることはできませんが、大坂選手の言動に賛否両論が拮抗する現在では、社会は変わったのだなと実感します。

 BLM運動の大きな契機は、ミネアポリスの黒人ジョージ・フロイドが、警官の取り調べ中に死亡した事件です。銃器が身近にあるアメリカ社会で、張り詰めた状況におかれた警官は「一瞬の判断」を強いられます。そのため、警察官による実力行使は、裁判になっても資格による免責とされることがほとんどです。しかし、フロイドは9分29秒も膝で首を圧迫されて死にました。これを自らの身を守るための正当防衛とは言えないでしょう。激しい抗議運動がおこったのは当然のことです。

 しかし、その抗議運動に暴動と略奪行為が伴いました。暴行を受けたり、店を破壊された黒人の被害者も多く出ました。日本のテレビ報道は、人種差別の理不尽さは強く訴えるのですが、正当な抗議運動と暴動の区別を明確に指摘しません。キング牧師は「私には夢がある」のスピーチで、”We must not allow our creative protest to degenerate into physical violence.”と述べています。自分たちの抗議運動を暴力に堕落させてはいけない、とキング牧師は仲間たちを戒め、非暴力に徹底して活動しました。昨今の事情に目をやると、キング牧師の偉大さを再確認することができます。

 同時に、正当な抗議活動と暴動を混同してしまうメディアの切り取り報道にも問題があります。ほとんどの人が人種差別はなくすべきだと考えていますが、声高に訴えても容易に解決はしません。人種問題の多様性と奥深さを正しく理解し、各自が真摯に考えることが大切です。その意味でお勧めの映画が、スパイク・リー監督のDo the Right Thingです。メッセージをどう受け取ったらよいのか、観終わってスッキリしない映画ですが、これほど考えさせられる映画はありません。ぜひ観ての感想をお聞かせください。

 大坂選手の全仏棄権問題からだいぶ発展してしまいましたが、そのようなお話を会員の皆様とさせていただける日が早くくるように祈っております。どうぞこの大変な時期を健やかに過ごされ、英語英文学会のいずれかの活動でまたお会いしましょう。

 

2021年6月 

                   

                     同志社女子大学英語英文学会

                         会長  松村 延昭